研究概要 |
今年度は,ソーラーライザーを設置予定の東京海洋大学品川キャンパス内の係船場において,準備段階として水質調査を行った.また,太陽光集光装置と光ファイバーを用いて底層海水内の植物プランクトンに光を照射し,酸素発生を促進することにより水質改善効果が得られるかどうかについて検討を行った.8月から3月までの間,夏期にはほぼ毎日,その後は平均週2回,各層の水温,塩分,溶存酸素,クロロフィル,フェオ色素,水中照度(光量子量)を測定した.この結果,夏期においても温度による成層は顕著ではないが,一方塩分による成層が著しいことが分かった.また,夏期の底層は貧酸素であった.成層は10月以降弱まったものの,冬期においても維持された.底層水への光照射の効果を,酸素ビンに海水を詰めて,照射域と日照射域に垂下することによって調べた結果,太陽光の照射によって酸素発生は見られなかった.この海水中のクロロフィル濃度とクロロフィル+フェオ色素濃度の比は0.2程度で,活性のある植物プランクトンは底層水中にはほとんど存在しないことが示唆され,光照射による酸素濃度の上昇が見られないのはそのためであると考えられる.測定期間中の,海底付近における水面に対する相対照度は1%以上であり,光合成による植物の成長が可能な水深であった.それにもかかわらず底層が貧酸素になる理由は,底泥表面での酸素消費が大きいためと考えられる.本年度得られた結果から,係船場における底層貧酸素の改善には,塩分成層の破壊が必要であることが明らかとなったので,次年度は,それを考慮したソーラーライザーを作成し設置する予定である.
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