研究概要 |
本研究は,浅海域に設けたライザー管とソーラーパネルから得たエネルギーによって垂直循環流を形成し,底層貧酸素水塊を解消するための装置を開発することを目的として行われた.当初計画では,ライザー管底部の海水を熱して上昇流を起こし,それにより循環流を形成することを目指し,数値モデルによるシミュレーションを行うとともに,設置予定場所の東京海洋大学品川キャンパス係船場の水温,塩分,溶存酸素濃度,クロロフィルとフェオ色素濃度を長期間モニターした.その結果,係船場には周辺の下水処理上の処理水が大量に流入しており,表層と底層の密度差が年間を通じて極めて大きいため,垂直循環流の形成による成層の解消には,著しく大きなエネルギーが必要であることが判明した.そこで,H18年度には計画を見直して,ポンプにより表層の高酸素水を底層に注入し底層水の貧酸素と還元的な底泥環境を局所的に改善するための装置を開発することとした.装置を稼働しながら水質をモニターして効果を判定し,改良を加えた.表層水を放出させる管を分岐管とし,多くの口径小さい噴出口を設けることにより,底層水と表層水をよく混合させ,密度を底層水に近いものとして底層付近に滞留させることに成功した.装置の最終的な改良が,冬季になってしまったため,表層と底層の溶存酸素濃度の差が少なくなり,貧酸素水塊解消の直接的な効果を判定することはできなかったが,注入水の底層への滞留は塩分によって確認ですることができた.今後,貧酸素水塊が形成される夏季を待ってさらに実験を続ける予定である.
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