今年度は、昨年度に続いて、東京湾の湾奥での優占種であるマハゼとアシシロハゼについて研究を行った。これら2種の仔稚魚は、形態的には種判別できないが、出現時期が異なることで判別が行われてきた。しかし、同定の根拠は出現時期の違いだけであり、形態学的な裏付けはこれまでなかった。 今年度は昨年度の結果、すなわち 1.マハゼとアシシロハゼの大型・小型個体について、東京湾の湾奥部にあたる葛西人工渚や新浜湖、小櫃川河口域などで十分な量を採集した。大型魚については両種が採集されたが、仔稚魚については時期的な制約(春には採集できなかった)から、アシシロハゼのみが採集された。 2.両種の大型魚については、ミトコンドリア(mt)DNAのcytochrome b(Cytb)領域をPCR法によって増幅するための諸条件の検討を行い、マハゼの塩基配列を決定するために使用されている既知のプライマーをアシシロハゼに適用し、使用可能であることを確認した。さらに、最適アニーリング温度を決定した。以上の手順を踏んでPCR法によって両種のCytb領域の増幅を行った。これに対してRFLP分析を行った結果、フラグメントのパターンが2種で異なることが判明した。 を踏まえ、今年度は 1.両種の仔稚魚(まず、ここではType AとType Bとする)の塩基配列を明らかにし、同定可能な成魚と比較することで仔稚魚の種判別を行い、 2.明らかとなった仔稚魚に基づいて、形態をしっかりと記載する という研究を行った。 その結果、Type A(春に出現)とマハゼ、Type B(夏に出現)とアシシロハゼの塩基配列の相同性は各々99.9%であったことから、Type Aをマハゼ、Type Bをアシシロハゼと同定できた。さらにこれらの仔稚魚の形態を詳細に検討しこ結果、峡部や体側側中線上の黒色素胞の出現状況に違いが認められた。
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