研究概要 |
本年度は上記研究期間(平成17〜19年度)の初年度にあたり、先ず実験魚種や観察試料作製法等について綿密に検討を行って後以下の実績を得た。 光受容-メラトニン分泌が行われる魚類松果体でも綱膜の場合と同様に、成魚において光受容細胞が新生され続けるのかどうか明らかにするため、まず、成熟間近いニジマスOncorhynchus mykiss若魚の松果体で増殖細胞核抗原(PCNA)免疫陽性細胞とロドプシン陽性光受容細胞外節との接続あるいは連結を調べ、光受容細胞新生の可能性を指摘してonlineによる論文投稿を準備中である(Omura & Korf : Distribution of proliferating cell nuclear antigen-immunoreactive cells in the pineal organ of the rainbow trou, Oncorhynchus mykiss, in preparation)。 さらに、ニジマス成魚にBrdU(チミジンの類似体)を腹腔投与し経時的に松果体および綱膜を摘出・固定し、凍結切片を作製し免疫抗体反応を行いBrdU陽性増殖細胞の分布を調べたところ、3日目頃からBrdU陽性細胞に対しロドプシン陽性光受容細胞外節が重なり合ってみられ、光受容細胞の分化・新生が示唆された。また、著しく成長のはやいティラピアOreochromis niloticusの若魚にもBrdUを投与し、経時的に凍結切片・免疫染色標本を作製して綱膜および松果体に豊富にBrdU陽性増殖細胞が出現することを明らかにし、同時にロドプシン陽性光受容細胞外節も可視化して光受容細胞新生の可能性を強く支持した(大村・Korf:成魚の松果体における細胞増殖.・分化機構、第7回シンポジウム「水生動物の行動と神経系」、2005)。 一方、生涯を通じて大きくなり続けるニジマスやティラピアに対し、小型実験魚としてよく知られるゼブラフィッシュDanio rerioの成魚についてもBrdU投与実験を試み、パラフィン包埋切片・免疫染色標本を作製して調べたところ、松果体および網膜にBrdU陽性増殖細胞はあまりみられず、成魚の松果体において光受容細胞が新生し続けるにはいくつかの条件が満たされねばならないことが示唆された。
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