研究課題
基盤研究(C)
ヒラメやカレイなどの異体類では、孵化後しばらくは普通の魚と同じように左右対称の形をしているが、しばらくすると成魚と同じような左右非対称な形に変態する。しかし多くのカレイ類の飼育現場ではこの変態がうまくいかずに問題となっている。我々はこれまでの研究に基づき、変態期に体の左右が異なった形へと分化する仕組みについて、「タイミング説」という作業仮説を提唱した。本研究では、まず、このタイミング説が本当に正しいかを更に精密に検討するとともに、多くのカレイ類に当てはまる普遍性を有するかを検証することを試みた。1)各種色素胞のインビボ・インビトロにおける出現飼育したヒラメについて、発達に伴う全ての色素胞の密度変化を明らかにした。その結果、ヒラメの色素胞は以下の3タイプに分類できることが明らかとなった。1)仔魚期発現型(仔魚型の黒色素胞と黄色素胞、および白色素胞)、2)稚魚期非対称発現型(稚魚型の黒色素胞と黄色素胞)、3)稚魚期対称発現型(虹色素胞)。ヒラメ受精卵に含まれる多種の細胞を培養し、約1ヶ月後に各種の色素細胞が分化するまでを観察できる培養系の確立を試みた。確認すべき点は残されているが、仔魚型黄色素胞以外の色素細胞は全て培養系での出現が再現出来た。2)ババガレイとヌマガレイにおけるタイミング説の妥当性変態までの期間が日本産異体類中では最も長いと推測されているババガレイ、および最も短い部類にはいるヌマガレイについて検討を進めた。その結果、両種とも自然水温で変態を完了するころからチロキシン投与を行った群で最も正常魚が多く出現した。即ち、タイミング説により、異体類の形態異常の出現機構が普遍的に説明出来る可能性が高くなったと考えている。
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