研究概要 |
魚群行動制御への応用を意図して、ヒトは感じないが魚は感じる刺激として人工磁気、紫外線、超音波を考え、これらに対する魚の忌避反応を調べた。実験の結果、点滅紫外線は魚種によって忌避効果が顕著に異なり、地磁気の800倍程度の強さの人工磁気と魚群探知機から発する程度の強さの超音波は忌避刺激に成り得ないことが明らかになった。 【人工磁気刺激】 実験地の地磁気の約800倍(265Gauss)から100倍(33.3Gauss)の強さの水平方向の傾斜人工磁気を加えた水槽実験では、ニホンウナギ(養殖魚)は265Gaussに置かれた隠れ場から出てより弱い磁気位置に移動するという期待された行動(忌避反応行動)を示さなかった。この程度の強さの人工磁気は忌避刺激にならなかったが、265Gaussに45分間以上置かれたウナギでは磁気感覚が失われた。 【紫外線刺激】 河に遡上したサケ親魚を用いた大型水槽実験で、サケはLEDからの点滅紫外線(λmax:383nm)に全く忌避反応を示さなかった。また、同時に行った比較試験では、点滅青色光(λmax:475nm)にも忌避反応を示さなかったが、点滅赤色光(λmax:623nm)には弱いながら忌避反応を示した。 生簣内のスズキは、2-3Hzの点滅紫外線に明瞭な忌避反応を示し、反応の強さは点滅青色光の場合と同等であった。 【超音波刺激】 魚群探知機(海上電機、記録機R-41型 送受信器SR-56/57型,最大出力)からの90kHzの超音波(イルカはこの周波数の超音波を発して)に対するアイゴ、イスズミ、ブダイの反応行動を生簣と水槽でビデオ記録した。これらの魚は藻場造成域の再生藻の食害魚として知られ、忌避刺激による駆除が望まれている。これらの魚は90kHz超音波を発しても遊泳行動に変化はみられず、藻を摂食中に90kHz超音波を発しても摂食を止めなかった。
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