水産増養殖業に多大な被害を与えている赤潮の防除技術の開発を目的として、赤潮原因藻Heterosigma akashiwoの個体群・種内識別手法としての遺伝子マーカーの確立を試みた。 1.任意増幅多型DNA解析によりH. akashiwo分離株間にゲノム多型を検出した。増幅産物の塩基配列に基づきsequence-tagged site(STS)化プライマーを設計しPCRを行った結果、分離株特異的な検出が可能であった。 2.microsatellite-prmed PCRによりH.akashiwo分離株にゲノム多型を検出した。PCR増幅産物中に見出されたマイクロサテライト領域を標的としたSTS化プライマーを設計しPCRを行った結果、分離株特異的な検出が可能であった。 3.H.akashiwoの葉緑体DNA上にコードされる16SrDNA-rbcL間の塩基配列を決定した。また、同じくラフィド藻綱に属する赤潮原因藻Chattonella属について、rbcL-cfxQ間の塩基配列を決定した。Chattonella属では、種間にrbcL-rbcs遺伝子間領域の多型が見出されなかった。 4.天然海水にH.akshiwo培養細胞を添加することにより作成した赤潮モデル系から環境DNAを調製したところ、葉緑体DNA上に確立した分離株識別指標によりH.akashiwoの分離株特異的な検出が確認された。
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