14時間明期/10時間暗期の光周期にて日周性産卵を誘導したメダカ雌より、各卵群(卵濾胞)を分別回収し、RT-PCR法によりFSH受容体mRNA、LH受容体mRNAの発現量を解析した。今回の解析では産卵前47時間の卵母細胞まで追跡することが出来た。FSH受容体mRNAは産卵前47時間から44時間の間で発現量が上昇し、産卵前23から20時間で急激に減少した。これに対してLH受容体mRNAは産卵前47時間の時点ですでに発現が確認され、産卵前8時間まで維持されることを明らかにした。両遺伝子の発現が確認された時点の試料と発現が消失した時点の試料から、SAGEライブラリーを構築し、その解析を行っている。最近、SAGE法にはその後の完全長クローニングにより有利となる新たな変法が開発された。現在これらについても試行中であり、将来の水産ゲノム研究への展開をにらんで、より簡便かつ再現性の高い汎用プロトコルの開発へとつなげたいと考えている。一方、今回熊本大学との共同研究により性分化期における両受容体遺伝子の発現についても新たな知見を得ることができた。FSHRmRNAは受精後6日目から、LHRmRNAも受精後1日目にはすでに発現していることが明らかとなった。また、FSHR/LHRmRNAの発現パターンをin situ hybridization法により解析した結果、LHRmRNAは受精後1日胚の脳の予定領域で強く発現する一方、FSHRmRNAは受精後6日胚から雌雄の生殖腺の支持細胞で発現し、その発現量は雄より雌で高くなることが明らかとなった。さらにアンチセンスオリゴによる機能抑制実験によりこれらが性分化や初期発生に関与することを示唆する結果が得られている。この事は従来成熟に関連すると考えられていたゴナドトロピンが性分化や初期発生にも関与するという新たな機能の可能性を示唆している。
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