研究概要 |
1.イカ類架橋酵素の生体内基質:ホタテガイ血球酵素および基質と共通構造を比較する目的でスルメイカおよびヤリイカ鰓酵素の生体内基質の同定を試みた。蛍光性アミンMDCの取り込み反応で基質タンパク質を探索した結果,蛍光は主にスルメイカ鰓の230,190,90,70kDaの各成分に取り込まれた。MDC非存在下の架橋反応では190,90kDa成分が経時的に消失していた。ヤリイカ鰓の場合は230,190,90kDa各成分に蛍光が観察されたが,架橋反応では190kDa成分のみが経時的に消失していた。190kDa成分は鰓の不溶性画分に含まれ,鰓組織が機械的損傷などで傷ついた際に,両種で共通の基質タンパク質として創傷治癒に関与している可能性が示唆された。190kDa成分のBrCN分解20kDa断片からAIDVEの5残基,10kDa断片からANTDEALの7残基配列を明らかにしたが,既知タンパク質との類似性は確認できなかった。ホタテガイ血球の場合も200kDaタンパク質が主たる基質であり,これらが海産軟体動物架橋酵素に共通の生体内基質であることが示唆された。 2.架橋部位構造の共通性:コイの場合,MDCはミオシンS2領域のGln(520)残基に特異的に取り込まれたが,スケトウダラ肉糊の場合も,主たるMDC取り込み部位はコイと同一のS2領域Gln(520)残基であった。魚類ミオシンのTGase架橋反応は,共通してミオシンS2領域のGln(520)と,その近傍にあるLys残基間で最初に分子内架橋が形成され開始されることが示唆された。一方,ホタテガイミオシンの架橋部位はrod領域に複数存在し,うちーつはC末端のArg(1840)-Asn(1940)中のGln残基と推定された。この他S2のC末端領域やLMM領域の他の部分にも架橋部位が存在している可能性が考えられ,魚類との相違が見られた。
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