本研究では、様々な生活習慣病のリスクファクターとなる肥満に対して予防効果が期待される機能性成分を水産物中に見出すため、肥満形成と密接な関わりをもつ脂肪細胞の分化抑制能について検討している。平成19年度は、細胞系による分化抑制効果のみならず、マウスを使ったin vivo実験により、脂肪組織の機能改善効果を有する物質についても調べた。 1.昨年度の研究により、ドコサヘキサエン酸(DHA)は3T3-L1細胞に加えラット初代脂肪細胞に対しても分化抑制効果を示すことを見出したが、その作用機構の一つとして核内転写因子PPARγの遺伝子発現抑制作用を明らかにした。また、エイコサペンタエン酸(EPA)にも同様の発現抑制傾向が見られた。 2.ワカメより単離したフコキサンチン(FC)を糖尿病/肥満マウスに投与した結果、これまで報告した白色脂肪組織(WAT)の増大抑制効果に加え、肥大化したWATで過剰に発現するtumor necrosis factor α(TNFα)遺伝子の発現抑制効果を見出した。 3.これまでに有効性を明らかにしたフコキサンチン(FC)とEPAやDHAを含む魚油を肥満/糖尿病マウスに併用投与した結果、WATの増大が相加的に抑制されることを明らかにした。 4.その際、生体内の脂肪組織量と相関する血中レプチン濃度の低下が見られ、これは脂肪細胞を用いた結果と同様であった。 以上より、魚油に特徴的なDHAやEPA、褐藻に特徴的に含まれるFCは前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を効果的に抑制し、また、生体内においてもWATの増大を抑制することを明らかにした。
|