アニサキス第III期幼虫より構築したcDNA発現ライブラリーに対して患者血清を用いた抗体スクリーニングを行い、陽性クローンのコードする塩基配列、演繹アミノ酸一次構造を決定することにより4種の新規アレルゲンを特定した。相同性検索の結果、これらのうちの3種は線虫のSXP/RAL-2 protein familyに属するタンパク質およびセリンプロテアーゼインヒビター、およびブタ回虫Ascaris suumの抗原AS14様タンパク質であった。残りの1種はデーターベース上に相同性を示すもののないタンパク質であった。さらに、これらの組換えタンパク質の患者血中IgEに対する反応性を調べたところ、それぞれ35、14、44、31%の患者の血中IgEが陽性反応を示した。 主要アレルゲンAni s 1のアミノ酸配列を基に、15または16残基のオーバーラップペプチドを合成した。これらに対する患者血中IgEとのEHSAにおける反応性を指標に、IgE結合エピトープを含むペプチドを特定した。さらに反応性の高かった3つのペプチドについて、アミノ酸残基数を減らしたペプチドや配列の一部をAlaに置換したアナログペプチドも合成し、IgEとの結合に重要なアミノ酸を決定した。 抗Ani s 1抗体を用いたアフィニティーカラムによる天然Ani s 1(nAni s 1)の簡易精製法を確立した。虫体1gあたり25μgの天然Ani s 1を精製できた。従来の精製法に比べると、2段階のクロマトグラフィー操作だけでAnis1精製できることから簡便性が増したのに加え、収量も約15倍に向上した。また、このクロマトグラフィーによって精製したnAni s 1と組換えAni s 1(rAni s 1)のアレルゲン性をELISAによって比較した。その結果、rAni s 1は天然品の約80%のアレルゲン性を保持しており、rAni s 1は確定診断用ツールとして利用できると判断した。
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