研究概要 |
平成18年度は,養殖魚の健康診断のための生体刺入型バイオセンサーの創出を目的に,計測デバイスに光ファイバープローブを,分子識別生体素子に各種固定化酵素を利用することにより,養殖魚の血中グルコースの定量に対して対応が可能で,迅速簡便な測定が行えるシステムの製作を試みた. まず,グルコースオキシダーゼ溶液と光架橋性樹脂素材(AWP)を混合し,透析膜に薄く塗布した後,蛍光灯で約1時間光架橋させ,固定化酵素膜を調製した.この膜を約3×10mmに切断後,緩衝液に浸漬して膜が筒状に形成されたところで乾燥させた.次に注射針(18G)の側面4箇所に口径800μmの穴を貫通させた針型キャップに,先の酵素膜と直径400μm光ファイバープローブ(先端にルテニウム錯体が装着され,その蛍光量の変化により酸素濃度が測定できる)を挿入し,針型バイオセンサーシステムを作製した. その結果,ティラピアの血漿を試料として測定を行ったところ,グルコース濃度とセンサー出力との間に良い直線関係が得られ,相関係数は0.9741であった.一方,血漿・全血間のセンサー出力の値を比較したところ,両者の問には良い相関性が認められ,相関係数は0.9745であった.このことから,血漿を標準試料として検量線を作成することにより,全血試料での測定が可能であることが明らかとなった.次に,本センサーを直接魚体に刺入して,血中グルコース濃度の測定を行ったところ,センサー法と従来法間には良い相関関係が認められ,相関係数は0.9475であった.また1回検体の分析所要時間は3分程度であった.さらに,本センサーの再現性を検討したところ,約70回の連続測定において,標準偏差は0.047を示し,良い再現性が認められた.また,センサーの安定性を検討したところ,測定後のセンサーを5℃で保存することにより50日間において安定した測定が可能であった.
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