研究概要 |
1.キチンオリゴ糖(GlcNAcn)を基質として魚類胃キチナーゼ(生理機能:消化)およびタバコスズメガ幼虫キチナーゼ(生理機能:脱皮)の基質分解特性を調べた。魚類胃キチナーゼにはα-キチン分解活性の強いマサバ(38kDa)およびアイナメ62kDa,β-キチン分解活性の強いアイナメ51および47kDaを、タバコスズメガ幼虫キチナーゼにはChi535(81kDa)およびC末端キチン結合ドメイン欠失のChi386(48kDa)を用いた。GlcNAcn(n=2-6)分解活性はHPLCにより分析した。マサバおよびアイナメ62kDaキチナーゼは4〜6糖(kcat:0.49-0.99)を分解して主に2,3糖を生成した。アイナメ51および47kDaキチナーゼは4〜6糖(kcat:1.9-5.8)以外に3糖も僅かに分解し、3,4糖より単糖も生成した。Chi535およびChi386も4〜6糖(kcat:0.11-0.29)以外に3糖も僅かに分解し、3〜5糖より単糖も生成した。餌料中の結晶性α、βキチンを消化分解する役割を果たすキチナーゼは比較的高い分子活性(kcat)を示し、エンド型で作用する傾向が強いこと、脱皮の機能を果たすキチナーゼの分子活性は低く、比較的ランダム型でオリゴ糖を分解すること、Chi535とChi386の基質分解特性は類似するが、Chi386では4糖分解能が半減することを明らかにした。 2.紅藻イボツノマタよりキチナーゼアイソザイムを精製し、それらの基質分解特性を検討した。得られたアイソザイムはいずれも、キチンオリゴ糖の非還元末端側より3糖以後のグリコシド結合を良く分解することを明らかにした。 3.アイナメ胃62kDaキチナーゼのN-末端アミノ酸配列およびファミリー18キチナーゼの保存配列より縮重プライマーを設計し、胃より調整したcDNAをテンプレートに用いてPCRを実施した。これより350bpの増幅を認め、この情報をもとにさらに約1.5kbpの増幅断片を得た。現在、その塩基配列を解析中。
|