研究概要 |
運動飼育が養殖魚の肉質に及ぼす影響を調べる前段階として,アユを用い,養殖魚と放流魚との肉質の比較を行った。 材料には,奈良県吉野川産の天然アユ・奈良県吉野漁協の養殖タンクで育てられたアユを使用した。5・6・8・9・10月の5回にわたりサンプリングを行った。実験項目としては破断試験・光学顕微鏡での筋肉組織の観察・コラーゲンの定量を行った。 破断強度は天然アユが養殖アユよりも高い傾向にあった。また死後硬直が強いため4時間後に破断強度が高くなる傾向にあった。光学顕微鏡での筋肉細胞の観察間からは,細胞間結合力の程度を表す細胞間隙の面積において養殖アユの方が大きくなった。しかし面積の変化率で見ると天然アユの変化率が養殖アユを上回った。つまり,肉質は天然アユが硬いが,その肉質は養殖アユと同様にやわらかく変化してしまうことを示した。次にコラーゲン量を定量するために,筋隔膜を含まない部分からのサンプリングを試みたが,肉が小さいため正確な採肉ができていないようであり,数値の誤差が大きくなってしまった。よって今回の結果のみからは天然と養殖とを明確に区別することはできなかった。今回の結果をふまえ,平成18年度においてはより大型な魚種であるマダイを用いての運動飼育を試みる予定である。
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