研究概要 |
今年度は,現行漁場利用制度に基づく漁業協同組合の漁業権管理と漁業・漁村の多面的機能との関係,及びコンブ養殖業における生産力の地帯構造分析に関するワークショップを実施し,前者については北日本漁業経済学会第34回大会で報告し,学会誌への論文投稿を行った。また,後者については各種統計資料に基づく地域横断的比較分析により,主力産地の類型的特徴把握を行った。その結果,(1)利尻地域;高価格追求・収量不安定・規模拡大型,(2)羅臼地域;高価格・収量安定・規模安定型,(3)道南地域;価格差大・収量安定・規模格差拡大型,(4)三陸地域;低価格・小規模安定型といった生産力の地域類型を検出した。 以上の検討を踏まえて,上記主力産地における漁場利用,漁業権管理に関する実態調査を実施した。調査対象地区としては,沓形(利尻),羅臼,大船(道南・白口浜),小安(道南・本場折浜),田老,譜代,重茂(以上三陸)の各地区としたが,養殖経営体の階層格差が大きく,漁場利用制度との関係で問題が典型的に現れているとみられる道南地域を重点的に調査することとした。調査の結果,道南地域では部分的に養殖施設及び漁場の私有財産化が進み,現行漁場利用制度に基づく平等主義的漁業権管理の限界性が顕在化しつつあったが,その一方で,個別経営の企業化を志向した展開力にも比較的狭い限界があることが明らかにされた。これらコンブ養殖生産力の地帯類型分析結果や典型地区の漁場利用再編実態に関する調査結果については,近く学会誌等に投稿を予定している。
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