本年度は以下の点に重点を置いた実態分析がなされた。第1は、人口サイズが急速に縮小している中山間地域における新たな農地・地域資源管理の担い手創出問題に関する実態分析である。本年度は構造改革特区の実態に焦点を当てた。新潟県上越市の浦川原地区等で実施されている、耕作放棄地を地元土木建設業者が自治体を介して借り受け、農地再整備をおこない、観光農園にしたり、棚田として復旧利用している実態を調査した。昨今、公共事業の縮小によって、土木建設業者はビジネスチャンスの拡大を多様な方向に探し始めている。雇用している労働力も地元農家からのものが多い。また業者は地元の農地・農道整備等を請負うなかで、地元の地域資源の実態に精通しているものも多い。こうしたなかで、自治体との契約を通して地域農業に参入することは、経営多角化、本業とのシナジー効果など多様なメリットを生み出しえる。対する地域農業サイドにおいては、過疎化・高齢化のなかで耕作放棄地再生の目途が立ちがたいなかで、こうした新規参入者の存在はひとつの解ともなりうる。こうした実態の調査をとおして、その意義と限界、あるいは新たな条件整備や政策方向の検討を行ってきた。 つぎに同じく新潟県上越市牧地区の農業公社の実態調査をとおして、1980年代末から「最後の農地の受け皿」と目されてきたその新たな意義と根本的問題点の再検討をおこない、中山間地域における新たな地域資源管理主体としての、上述の民間業者との比較検討を行った。こうした比較研究をとおして、新たな準公共財(多面的機能に富む中山間地域農地等管理サービス)の供給のあり方、供給主体に関する検討をおこない、そのなかで日本の中山間地域型PFIの可能性を検討した。
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