平成19年度は、過疎化・高齢化によって担い手が不在化した中山間地域農業の担い手システム再建の手法について、まずインキュベーション事業に関する分析を行った。それは、(1)新潟県津南町における新規就農者群の経営実態と農地保全に関する意義について分析、さらに(2)同町の財団法人津南町農業公社の新規就農希望者を育成するインキュベーション事業の意義と課題の分析からなる。こうしたなかで、インキュベータとしての農業公社に対する公的支援の妥当性と論拠について検討を行った。つぎに、地域農業経営と資源管理の司令塔としての農業公社の意義、公民パートナーシップ型地域経営体としての展望と課題を分析した。つぎに、山形県朝日町の全町レベルでのエコ・ミュージアム事業の意義と課題に関する実態分析を行った。こうした取り組みが地域の社会関係資本をどのように構築し得るのかについての分析がなされた。なお、平成18年度に中山間地域における社会的企業の意義と課題について、日本とイギリスの実態の比較分析をおこなったが、平成19年度はその実態分析結果をもとにさらなる理論的検討を地方行政学研究者(龍谷大学LORK)らとの討議を通して行った。最後に、イギリスの新たな衰退地域再生政策であるLSP(地域戦略パートナーシップ)制度とLAA(地域合意制度)についての資料収集や調査を行った。こうした成果の一部は平成20年7月にソウルで開催される世界農村社会学会の「内発的地域発展の国際比較研究」ワーキンググループのセッションで報告予定である。
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