本研究では、過疎化が進行し、地域営農と資源管理の担い手の不在化が決定的に進行してきた中山間地域における担い手システム再生の新たな方向を分析してきた。本研究では、(1)政策的には農水省の中山間地域等直接支払制度が施行されているが、その政策対象者が不在化する中での対応方向と今後の展望を検討してきた。(2)さらに、そこでは新たな地域マネジメントシステムとその新たな担い手の必要性を強調し、EUとりわけイギリスの社会的企業や公民パートナーシップシステムをべースとした地域再生政策からわが国が学べるものの分析を行ってきた。 具体的には、(1)に関しては、新潟県上越市の牧区と清里区における農業公社を中心とした担い手再生システム、新潟県津南町における農業公社による新規参入者の育成事業、糸魚川市上根知地区における地場産業新規参入による水田利用管理システム再建、岐阜県東白川村と富山県南砺市における農業公社への中山間地域等直接支払制度支払金の集中配分による担い手代行システムについて分析してきた。(2)に関しては、イギリスの農村部で展開する社会的企業をウェールズ(1事例)、イングランド(1事例)、スコットランド(2事例)を分析し、日本農村における社会的企業の萌芽的事例との比較研究を行った。日本ではそのために、京都府南丹市旧美山町での複数の事例を実態分析した。こうした成果は後述の学会誌論文や編著書等で公開していった。
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