今回の科学研究費補助金を受けての研究期間は平成17年度から平成19年度にかけての三カ年であった。研究の目的は、今後の地域特産物のあり方に資するため、ひとまず、地域特産物の展開に関する研究をフードジステム学的視覚から考察することであった。研究対象とした作物は6作目であり、さとうきびをはじめ、てん葉たばこ、ホップ、こんにゃくいも、及び繭を取り上げた。これら作物の戦後における生産展開を整理した後、近年における生産動向について、さとうきびの場合、鹿児島県種子島、てん菜では北海道本別町、葉たばこでは、熊本県あさぎり町(旧、岡原村)及び岩手県二戸市(旧、浄法寺町)、ホップでは、岩手県遠野市及び軽米町、こんにゃくいもでは、群馬県昭和村、繭では、福島県二本松市及び栃木県小山市における経営実態調査に取り組んだ。あわせて、当該地区の管内農業関係団体での聞き取りを実施した。結論として、研究対象どした6作目は従前同様に生産農家にとって、及び地域農業や地域経済にとって、農業の多面的機能の発揮とともに、重要な地位にあると総括できた。なお、これら作物の今後の展開にとって、農家における生産と生活の再生産を守る視点から、同時に、地政学的な視点から、国内生産を最優先に位置づけ、農家の不安を払拭していくことが重要であるとした。言い換えれば、これら作目の日本における農業総生産額に占める割合は小さいものであったが、なお、当該産地における雇用及び所得確保の面では、極めて重要な立地展開であった。近年、いずれの作物も漸減傾向を強めているが、国産国消主義の下で、当該作物の国内生産が堅持されていくことが、重要であることを指摘した。
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