中国における食料産業クラスターの形成について、産業クラスター理論を基礎として、主に、食料経済学、国際貿易論、開発経済学の側面からの理論的な検討を行うとともに、ポーターの産業クラスター形成要素に関するダイアモンド・モデルのうちの、需要条件と企業競争・競争環境に重点を置いた分析を行った。 需要条件に関しては、中国における経済発展と食料消費の構造変化との関係から理論化を行った。食料経済学と開発経済学の観点から、経済発展に伴う所得向上と所得格差の拡大が食料消費の量的変化と質的変化に与える影響について、計量的および実証的に明らかにするとともに、経済発展段階ごとに求められる食料政策のあり方を提示した。企業競争・競争環境に関しては、北東アジアにおける食品産業の海外直接投資と地域内の食料貿易における相互依存関係の深化の観点からの理論化を行った。農業農村の発展に密接な関係のある食料産業クラスターが、中国国内だけで完結するのではなく、国を超えた国際食料クラスターとして北東アジア地域において形成されつつあることを明らかにし、同時に、国際食料クラスターの形成を通じたイノベーションが、北東アジア地域における食料安全保障に果たす役割を明らかにした。 以上のクラスター形成要素が、食料産業クラスターの形成に与える影響について明らかにするとともに、食料産業クラスターを取り巻く経済環境として、中国農業の持続可能性に関する分析、北東アジア農業をめぐる経済連携をめぐる合意形成と食料政策に関する分析を行った。そして、3年間の調査研究をもとに、中国における農業農村発展のためのクラスター戦略に関するとりまとめを行った。
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