本研究では政策評価を活用して地方自冶体の農林水産行政の改革について考察することを課題としている。兵庫県農政環境部は、農林水産ビジョンに掲げるめざす姿の実現に向けて、多様な行動主体と目標を共有化し、知恵や力を出しあい、適切な役割分担のもとに、ともに取り組んできた。ビジョンで目指す姿がどれだけ実現できたかを毎年評価し、県民に公表するという方法で、ダイナミック・マネジメント・システムを循環させる取組を7年間にわたり実施してきた。こうした取組は徐々にではあるが成果をあげている。より大きな成果を上げるためには、県民、納税者の視点からアウトカム指標に基づく評価をより一層推進することが必要であろう。事務事業評価は、行政機関に既に存在する事務や事業を取り出し、その効果、効率について「事務・事業」の品質チェックをするという特徴をもっており、「戦略」レベルの見直しからは、まだ距離がある。愛知県東海市では、このような状況の打開策としてベンチマーク方式の政策評価を導入した。しかし、住民のニーズを反映した指標は行政の事業から遠いので、住民のニーズと行政の事業を結びつけるロジックモデルを検討し、その後の政策形成につなげていくことが課題といえる。オレゴン州ティラムク郡は、社会指標型ベンチマーキングを活用して、高い成果をあげている。行政からは独立しているティラムク未来委員会は、地域住民から多くの意見・情報を集めて地域の問題を明らかにし、戦略ビジョンとコミュニティ・アクション・プランを策定した。また、達成度評価の結果を公表してきた。ティラムク郡の取組が高い成果を上げている理由として、困難であってもあきらめずに改革への取組を継続する未来委員会の能力、政策評価の実施に関する多くのノウハウを持つオレゴン大学CPWの協力、自分たちの住む地域をよくしたいという地域住民の強い意思と民主主義を実践する住民の能力、を指摘できる。
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