研究概要 |
本研究の目的は,日アセアンFTAに日本農業が組み込まれた場合の影響を定量的に評価するフレームワークを構築し,具体的な実証研究を行うことにより,日アセアンFTAに日本農業をどのように組み込むことが妥当かつ可能であるか,農業関係者・一般国民・相手国に説明し,理解を得るための検証資料を提供することにある. 平成17年度においては,FTAのWTOとの整合性,FTAの持つ差別性の弊害の最小化,FTA利益の偏在性の是正,関税撤廃とダンピング輸出措置とのバランスの確保,アセアン諸国から日本への農業労働力の移動の是非といった観点から,農業を日アセアンFTAにどの程度含めることができるか,どの品目がどの程度センシティブかについて分析し,必要な政策措置の検討を行った.具体的には,FTA対象国間で個別品目の生産費,生産者価格,輸出価格,小売価格等を比較,計量モデルにより品目ごとの影響を分析し,生産者への影響だけでなく,自国全体の経済厚生,貿易の歪曲性,世界全体の経済厚生の変化を検証した.なお,鈴木宣弘はカンボジア,加賀爪優はタイ,前田幸嗣はアセアン全体を対象に,必要なデータ収集を行った.また,前田幸嗣は,自身の開発した国際貿易の空間均衡モデルを,日アセアンFTAの分析に適用できるようなフレームワークに再構築した.
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