研究概要 |
平成17年度においては,北部の主要茶産地(タイグェン省)の調査研究の効果的推進のため,地元行政と大学及び生産農家との強固な協力体制を構築することを中心に,研究の目的・概要,今後の計画等について協議し,プレリミナリな農家調査を行った. この結果,予定していた現地研究協力者に加えて,新たに地元タイグェン大学から3名と技術改良普及員1名の研究協力者を得た. なお,今回の調査研究によって得られた知見の概要は次のとおりである. (1)近年,国外輸出市場の拡大を背景としてベトナム茶の生産量は大幅に増加しているが,その中にあって高品質茶の生産で評判の高い一部産地は,国内市場を中心としたマーケティング対応を強化することによって,他産地との差別化を図っている. (2)そうした産地の個別農民経営における茶栽培技術は,他産地と比べて相当高い水準にあり,優良品種への更新,実生から接ぎ木栽培への変化,灌漑池の新設・整備など,個別農家レベルでの技術水準の向上と資本投下が進んでいる.とりわけ,生産力向上(乾期の収量増加)を目的とした広範な灌漑池整備の動向は,現地研究者にも十分認識されていなかった茶産地の実態に関する新しい知見の一つである. (3)これまでベトナム茶の国内市場向け販売流通形態は,各個別経営で生産加工した商品を消費地流通業者が個別訪問し集荷する形態が主流であったが,先進的産地では産地集荷業者の台頭にみられるように,地域経済社会構造の変容が指摘できる.こうした変容が産地に与える影響の詳細な調査分析は次年度以降の課題であるが,これまで地域的に偏在していた市場価格等の情報が産地内農家に共有されやすいものとなり,茶生産農家の生産物の品質向上に向けた意欲と生産技術の全般的なレベルアップに寄与しているものと推察された.
|