研究概要 |
本研究は,サプライチェーンマネージメント理論を通し,地域食品企業の経済合理性や地域食料経済システムに与える影響を明らかにするものである.対象となる企業が生産する商品は,主として,伝統的食品と呼ばれているものであり,それらの消費の特徴をPOSデータによる需要関数の計測からみると,大手食品企業のNB商品と比べて,有機原料や国産原料の使用や昔ながらの製造法などこだわりの程度が高いもののそれが販売量に結びついていない点や,自己の価格弾力性は比較的高く,価格次第では需要の伸びが期待できる点が明らかとなった.また地域食品企業とはいえ,原料の多くを海外からの輸入を含め,他地域からの移入に依存しており,域内の産業連関分析による結果を見ても,増産等による地域に与える効果は小さいものであった.この背景には,国民は地元産ではなくても国産なら安心・安全で,また地元より有名産地のもののほうが価値が高いという消費者の考え方が企業に影響しているものと思われる.そのため国産原料の利用による効果をみると,たとえば精穀・穀粉の場合,1%の増産が国内総生産額を1.0087%増加させる(2次波及効果までで)など,当該商品の増産による影響は当該部門だけにとどまらず,広範な産業部門に影響することがわかる.DEAを用いた地域食品企業と大手食品企業との経営分析の結果,大手企業に対して総合指数では地域企業は0.65〜0.81と劣っている.ただしこの結果は他産業と比較しても著しく低いとは言えず,個別企業では大手並みの効率性がある企業もある.ただし地元密着度の高さと企業経営の効率さが比例していないため,地域産原料使用への優遇措置や補助制度,販売促進のための補助制度等地域食品政策上の改善が必要である.またSCMが導入され,地域農産物と食品企業の連携が進んでいる欧米との比較が必要であり,現在アメリカに滞在し研究を進めている.
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