研究概要 |
十勝地方の耕地防風林の減少を防止するためには、防風林の多面的機能を科学的に証明することが必要である。そのため特に個人財産管理になっている圃場の横に立つ耕地防風林の農地保全施設としての有効性ばかりでなく、景観保全や小動物の住処としての意義を究明することを目的としてこの研究を行っている。 本年度は、大きく2点の見地から研究を行ってきた。一点は、これまで構築してきた十勝地方の耕地防風林のデータベースの再考であり、もう一点は、小動物の耕地防風林の利用に関する定量的な証明である。 1点目の耕地防風林のデータベースの再考に関しては、北海道十勝管内音更町を対象とし、データベース化した防風林の防風効果について再度検討を行った。その結果、多くの農地において防風林の効果によって、風害防止が行われていたが、その防風林密度が低いことや幼木であることが、その効果を激減し、データベース上の防風林は存在するものの、密度や樹高の不揃いなどがデータベースの属性情報から脱落していたことが、防風効果を発揮しない防風林の存在であることがわかり、データベースの再構築によって、耕地防風林の農地保全効果がより明らかとなった。 2点目の防風林と小動物の関係に関する研究は、北海道帯広市の帯広畜産大学構内および隣接する森林で調査を行った。その結果,エゾモモンガは分断された森林に生息するが、滑空移動することによって防風林を回廊として使用し、いくつかの他の森林に移動することが可能であることが明らかとなった。また、その生育する森林の植生はシラカバやカシワなどの広葉樹とチョウセンゴヨウやカラマツ,アカエゾマツから構成されていることもわかった。
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