研究概要 |
わが国太平洋側に広く分布している,結晶片岩主体の破砕帯地すべり地では,亀裂中の地下水流動が卓越しており,地下水排除の地すべり防止効果が高い。静岡県浜松市北部に位置する,対策工概成済みの地すべり地(長さ約700m,幅約250m)を対象として,地温探査を実施した結果,東側,西側に地下水流動経路(水みち)が存在することが推定できた。斜面上部を中心に行った自然電位探査により,頭部及び後背地が電位が低い涵養域,脚部以下が電位が高い流出域と考えられ,浸入能の大きい後背林地と旧棚田の植林地から地すべりブロックに地下水が供給されていると考えられた。既設の水抜きボーリングの流量調査ならびに1個所での連続測定によると,涵養帯につながる東側水みちを貫通する水抜きボーリングからは定常的な排水があるが,涵養帯が不明瞭で地下水位が低い西側水みちを貫通する水抜きボーリングからは,相当量の降雨があり,地下水位が上昇した場合に1時間程度の遅れで大量の排水があることが明らかになった。孔内の観察には防水ビデオカメラ及びパッカーを取り付けて測定下限流量を向上させた流量計をグラスファイバーロッドで水抜きボーリングに挿入する方式を用い,30m以上の全区間の調査を行うことができた。東側水抜きでは,植物根が孔口直後を閉塞している管や管内に土砂が堆積している管があった。西側水抜きは内部が乾燥しており,崩積土層にあたる範囲で集水している痕跡が見られた。西側水抜きは常時の排水機能は見られないが,多量の降雨の際に浸透水を浅部で捕捉する効果があると考えられる。
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