本研究では活性酸素消去発光を、食品中の過酸化・抗酸化物質の評価手法として用いるために必要となる条件について明らかにすることを目的とした。本年度は、昨年度明らかにした発光の解析指標の妥当性の検証を実際の食品への応用を通して行った。試料として用いる清酒に関して、製造・熟成過程の管理技術は人の官能による部分が大きく、それを補完する意味でも数値化した簡便な指標が求められている実態がある。そこで、清酒の発光曲線の定式化、劣化成分とX発光の相関、抗酸化成分とY発光の相関、鑑評会に出品されたサンプルでの実証試験を行い、食品評価技術へと発展させることを検討した。その結果、清酒の劣化指標としてはX発光100秒積算値、抗酸化指標としてはY発光最大値を用いることが望ましいことが明らかになり昨年度の知見が裏付けられた。劣化度に関して、初呑み切り試料ではTBAとX発光に関係は見られなかったが、人為的に光劣化させた試料では非常に高い相関が見られた。よってTBA反応による吸光度は幅が小さく、低い劣化度では指標として用いるのに信憑性に欠けるため、他の化学指標で補完して発光と比較することが適切と考えられた。抗酸化能に関して、初呑み切り試料ではDPPHとY発光に高い正の相関が見られ、製造工程での迅速で簡便な発光指標利用の可能性が認められた。しかし、光劣化試料の抗酸化能は負の相関が見られたため、DPPHとY発光に関与する抗酸化物質が異なることが推測された。製造履歴の同じ清酒の経日変化を捉えることはもとより、製造履歴の異なる清酒に関しても、その劣化度・抗酸化度を簡便かっ、迅速に計測できる可能性が明らかになり、今後は官能試験との相関性の究明などへ研究を発展させる予定である。
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