研究概要 |
本研究では,昨年度に引き続き栽培に有益な昆虫を誘引し害虫を排除するシステム,すなわち光特性を利用した物理的防除システムの構築を目指し,多種多様な花の分光反射特性や模様について情報収集および測定を行った。さらに、防除実験は継続中である。 1)蜜への道標を示す花は,UV標識として花弁の中央に吸収帯を持つ花が多かったが,中にはポ花弁の中央に反射帯があり,UV標識と思われる特徴を示している花もあった。このことから,近距離定位のためのUV標識として,訪花昆虫は花弁の反射帯に導かれる昆虫と,吸収帯に導かれる昆虫に分類できると想定された. 2)これまでの測定結果から,多くの花は模様を持つことで昆虫を効率的に誘引していると考えられる。これまで一般的だったある波長帯の色や光だけによる1次元的な防除方法から、模様を取り入れた2次元的な防除方法に転換させることで、より高度な物理的防除方法が確立できると思われる。黄色粘着シートに分光反射特性の異なる色の模様を書き入れ,植物工場内において引き寄せられる昆虫にどのような変化があるか実験を行っている。 3)原種から品種改良を行うにつれて模様の変化が起こるかどうか,ペラルゴニウムを対象に測定した。23品種測定して,57%が上二枚の花弁に紫外域の吸収帯があり,30%の花は中央に紫外域の反射帯があった。これを人為的に固定された品種だけで見ると86%(7品種中6品種)が後者の特徴となり,逆に,人為的に固定された品種を除く花だけ見ると75%(16品種中12品種)が前者の特徴を示した。このことから人為的に品種を固定することにより紫外領域についても花の模様が替わり,引き寄せられる昆虫の種類にも影響があると考えられる。
|