一般に植物組織の水ポテンシャルの計測は、植物組織を切り取って、切除組織をサイクロメーターで計測される。しかし、細胞生長が起こっている組織では、切除後細胞壁の緩和が起こることが知られており、生長している組織を使ってのサイクロメーターを用いての水ポテンシャル計測は計測精度に問題があることが指摘されてきた。しかしながら、サイクロメーターは水蒸気分圧の平衡下で植物組織の水ポテンシャルを直接計測できる利点があり、他の計測法では完全な非破壊状態で計測できない問題点がある。そこで、本研究では、植物サンプルを非破壊状態で収めることができるサイクロメーターチャンバーを作成することで、非破壊状態の水ポテンシャル計測を行うことを果実で行うことを目的としている。 サイクロメーターセンサーの感度を上げるために3つの熱電対を組み合わせたサーモパイルで作る実験を行った。1つの熱電対で0.1MPaあたり480nVの出力があるため、3つの熱電対を組み合わせたシステムではその3倍の出力があるはずであるが、2.0〜2.4倍の出力にとどまった。改善を繰り返したが、3倍まで近づくことはなく、熱電対のセンサー部は溶接したものであるが、参照点をはんだ付けにせざるを得ないため、新たなセンサーの開発には、接合のための熟練者が関与する必要性があると思われた。 トマト果実とイネの胚乳の細胞計測をプレッシャープローブでの非破壊計測とサイクロメーター計測で比較を行った。細胞拡大に伴った水ポテンシャル勾配と膨圧に関連して細胞拡大が起こっており、温暖化に関連した高夜温によって水ポテンシャル勾配が低下することにより、イネの胚乳の拡大が低下することが示唆された。
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