研究概要 |
布マルチ水稲直播栽培は,有機農業を省力的に実現できる農法として,全国的に普及しつつある。本栽培法の更なる普及を目指すとき,作業効率の向上と作業負担の軽減は不可欠であり,この対応として,今年度は5条植え田植機に複数の布ロールを装着した多連式布敷設機と,敷設作業時に風による布めくれを防止する散水装置を試作し,これら装置の性能を室内及び野外実験により検討し,実用化の可能性について検討した。 先ず,2ロール式敷設機を3種試作した。各布ロールを重ね代10cmになるよう取付けフレームを単純に上下配置した結果,上部ロールの繰り出しが容易でなかった。そこで,上部フレームの真下に発砲スチロール製の接地輪を設け,この回転運動を利用して上部布を繰り出すようにした。その結果,上下の布マルチとも問題なく敷設されたが,接地輪という余分の装置が必要で実用性に欠けると思われたので,次に試作したのが各布ロールを前後に千鳥状に配置した敷設機である。簡単機構で布ロール取り付けも容易であるので本方式を実用化することとした。 敷設作業に当たっては,田面が硬いほど作業性が向上すると考え,代かき14日後の小圃場において圃場作業量を調べた結果,1ロール式の約1.3倍(8.9a/h)で,2ロール式の効果は少なかった。そこで,敷設長さを100mと仮定し,ほ場作業量を求めた結果,21.6a/hとなり,一般的な移植6条植え田植機の場合とほぼ同程度,補助作業者1名を加えるなら,更に能率向上が期待できることが分かった。代かき2日後及び14日後のオペレータの心拍増加率を調べた結果,前者で120.5%(Metsで2.2),後者で114.1%(1.8)となり,ほ場が硬いほど身体負担も軽減できた。風による布のめくれ防止のための散水量は,噴霧圧3MPa以上,走行速度0.9m/sec以下なら上下マルチは十分付着することが分かった。
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