初年度は、接ぎ木の活着生理をより明確にするために、維管束形成(連絡形成層、仮道管、道管、篩管分化)の程度とオーキシン・サイトカイニン添加量の関係、環境と細胞生成量と維管束形成の関係について調べた。細胞と組織の観察は、切片形成し、顕微鏡観を行った。環境制御装置については、安定性と速応性により優れた装置と制御系、特に協調制御系を設計・製作するにあたり、情報収集部における制御ルール作りのための基礎データを蓄積中である。 子葉の有無が接ぎ木の成否に影響する、キュウリの断根接ぎ木においてホルモン添加実験を行い、オーキシンとサイトカイニンの添加量と成否との相関が求められた。 接ぎ木苗の活着生理を明確にするために、トマト実生苗の茎に切り込みを入れ、その部位における導管の分化の程度、形状や分布について調べた。切り込みは、本葉が3〜4枚程度の実生トマト苗(品種:‘桃太郎')の子葉と第一本葉の節間中間部に、斜め約45度に茎径に対して約1/4の深さまでカミソリで切り込みを入れた。また、試験区は切り込みを入れた区(切り込み区)と、切り込みを入れその部位に接ぎ木用のクリップで装着した区(クリップ区)を設け、さらに対照区として切り込みを入れない無処理区を設けた。切り込みを入れてから、4、7、11、21日目に、切り込み部を含む長さ60mmに調整した茎の下部から、500cmH20(約0.05MPa、0.5気圧 通常の根圧は1〜2気圧)に加圧した水を吸水させ10分間の通水量を計測した。次に、同圧に加圧した染料を吸液させ導管を染色した。染色処理を施した茎を、ミクロトームを用いて茎上部より薄く剥離していくとともに、各横断面の二次元画像を顕微鏡とデジタルカメラを用いて撮影した。撮影した二次元画像を処理し、茎の外形と染色された導管を各階層で抽出し、これらをつなぎ合わせることで外形および導管の形状を三次元的に構築し、可視化した。 情報収集部として、接ぎ木苗の群落を対象とした俯瞰画像をデジタルカメラで撮影し、萎れ程度から環境制御ルールを作成するにあたり、葉の重なりを考慮し、テクスチャー特徴量を求めるソフトウェアを作成した。
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