初年度(平成17年度)は、接ぎ木の活着生理をより明確にするために、維管束形成(連絡形成層、仮道管、道管、篩管分化)の程度とオーキシン・サイトカイニン添加量の関係、環境と細胞生成量と維管束形成の関係について調べた。接ぎ木苗の活着生理を明確にするために、加圧水を吸水させ10分間の通水量を計測し、加圧した染料を吸液させ、有効な導管の形状を三次元的に構築し、可視化した。接ぎ木苗の群落を対象とした俯瞰画像をデジタルカメラで撮影し、萎れ程度から養生環境制御ルールを作成するために、テクスチャー特徴量を求めた。 次年度(平成18年度)は、木部の再生に着目し、活着程度の評価方法を構築した。手動式真空ポンプを用いた一定の吸引圧力下における通水量を通水能力として、その計測システムを構築し、通水量が計測できた。また、接ぎ木後に再生された木部の通水経路について、木部を染色した茎の表皮や皮層を環状除皮して木部を観察表面上に露出させる方法を考案した。その結果、短時間で容易な処理で、再生された木部を連続的かつ詳細、かつ、動的に観察できた。 活着と順化を同時進行させる養生環境を自動的に制御することを目標とし、実生苗と接ぎ木苗の群落を対象に、俯瞰による画像撮影を行い、撮影した画像に対して画像の特徴量を計測した。撮影画像と各特徴量を比較した結果、苗に大きな萎れが生じた際には、苗投影面積は減少し、苗の萎れが進むと葉が下へと湾曲することにより、その投影面積を減少させることと一致した。 最終年度(平成19年度)は、接ぎ木の活着生理における、内生ホルモンのジベレリン・オーキシン・サイトカイニンの作用を意識した維管束形成(連絡形成層、仮道管、道管、篩管分化)に合わせた環境を設定した結果、接ぎ木の活着速度が向上した。また、試作した省エネ型の養生状装置を、温度勾配を利用した装置にさらに改良し、更なる省エネ化ができた。
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