本研究は、3次元空間における物体認識機能を持ったイチゴ収穫ロボットの開発を目的とする。研究期間内に照度差ステレオ法(Photometric Stereo法、以下PS法と略す)を基礎理論としてイメージベースド3Dモデリングシステム(Image Based 3D Modeling System、以下IB3DMシステムと略す)を理論的に構築するとともに試作し、イチゴを対象とする物体認識システムの開発を行った。まず、PS法によるIB3DMシステムの設計を行った。本システムは、高感度CCDカメラ1台、カメラの焦点を中心に半径100mmに等間隔で設置された無指向性の点光源(3または4個の無指向性白色電球およびLED)、およびシステム全体を統括するコンピュータとソフトウェアから構成される。CCDカメラは微弱光用冷却CCDカメラ(輝度分解能16bit)を用い、カメラ先端のレンズマウントにRGBフィルタを組み込んでカラー画像の取得を可能にした。試作したIB3DMシステムは小型軽量であり、LED等の微弱光下でも高精度な画像情報を取得する事が可能であった。そして、対象物体に対し単一光源による複数画像を取得し、これらの画像を用いて対象物体の3次元形状を推定するアルゴリズムを開発し、IB3DMシステムに組み込んだ。通常のカラーCCDカメラでは、イチゴ果実の重なりの判別は困難であるが、本システムでは3次元空間における形状情報の取得が可能であるため重なって存在する果実の判別が可能である。 さらに、イチゴ果実の果柄を見極めて切断し、果実を損傷なく収穫することを可能にするエンドエフェクタを試作し、IB3DMとの統合を図った。IB3DMシステムをマニピュレータマウントタイプの外界認識センシングシステムとしてイチゴ収穫ロボットに搭載し、イチゴ果実・茎葉の模型を用いて、基本的機能の確認を行い、イチゴ果実および果柄の3次元形状および位置の把握が可能になった。しかし、単一色の濃淡で構成される画像と複数色(例えば赤と緑)の濃淡で構成される画像では3次元形状の推定精度が異なるため、PS法アルゴリズムの改良が必要である。
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