本年度は腸管由来培養細胞系を使ったin vitroの実験で、ヒトや動物腸管由来乳酸桿菌やビフィズス菌株の中から、創傷治癒促進活性の高い菌株を選抜した。 まず、Bifidobacerium bifidum、B.longum、Lactobacillus gasseri、L.crispatusなど主としてヒトや動物糞便由来の約50株の乳酸桿菌やビフィズス菌株を用いて、腸管上皮の創傷時に露出する基底膜や粘膜固有層の主要構成成分である細胞外マトリックスタンパク質(ラミニン、IV型コラーゲン、フィブロネクチンなど)に高い付着性を有する乳酸菌株を選抜した。その結果、いずれかの細胞外マトリックスタンパク質に高い付着性を示す菌株として10株のL.gasseri、L.crispatus菌株を選抜した。 次いで、1で選抜した乳酸桿菌やビフィズス菌株の菌体表層抽出物について、ヒト皮膚繊維芽細胞NC1RGBとともに、より腸管に近い条件で検討を行うためヒト大腸由来のCaco-2細胞を用いて、細胞付着と増殖促進活性を試験した。その結果、陽性標準(ヒト胎盤およびウシ真皮由来I型コラーゲン)添加時と同等かそれ以上に細胞の付着を促進する菌株として3株を選抜した。 さらに、1で選抜された乳酸桿菌の菌体表層抽出物が、コンフルエントに増殖させたヒト胃由来のGCIY細胞、大腸由来のT84細胞、Caco-2細胞およびHT-29細胞の一部を吸引により剥離して作成した創傷の修復に与える影響を顕微鏡下で観察した。陽性標準(リゾフォスファチジン酸およびポリアミン類)添加時と比較して修復時間の短縮を指標にして、活性の高い菌株を選抜中である。これまでに試験した結果では、L.crispatus菌株で修復促進活性が認められた。
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