平成17年度の研究で、ヒトや動物腸管由来の乳酸楳菌やビフィズス菌株約50株の中kから細胞外マトリックスやヒト腸管由来上皮細胞様培養細胞に良好な付着性を有し、培養時に良好な生育性を有する菌株を選抜した。 平成18年度は選抜された菌株の中からL.acidophilus、L.crispatusおよびL.gasseriの各1株を用いて、創傷治癒促進活性を評価した。すなわち、コンフルエントとなるまで培養した腸管上皮細胞様細胞であるCaco-2細胞に、乳酸菌を添加し炭酸ガス培養器中で培養した。乳酸菌を除去・洗浄後、Caco-2細胞層の一部を剥離した(創傷形成)。創傷形成後のCaco-2細胞を炭酸ガス培養器中で培養しながら、細胞層の修復(創傷治癒)状態を経時的に観察した。その結果、試験した3菌株は、無処理の場合と較べ、細胞層の修復を促進した。 次いで、最も、促進効果が高かったL.acidophilusの1菌株を用いて修復促進機構について検討した。生菌体、加熱死菌体および菌懸濁上清の修復促進活性を比較したところ、死菌体では生菌体と同程度の活性を示した。そこで、促進活性は菌体表層成分によるものと推定し、S-layerタンパク質を抽出した。S-layerタンパク質を不溶性画分と可溶性画分とに分けて修復促進活性を比較したところ、不溶性画分に活性が見られた。L.acidophilus菌体で処理した場合のCaco-2細胞側の応答を蛍光顕微鏡で調べた。その結果、未処理の場合と比較してL.acidovhilus菌体で処理した場合にアクチンフィラメントの集積が認められた。 以上の結果から、L.acidophilus菌株はCaco-2細胞のアクチンフィラメントの集積を促進することにより、剥離細胞層の修復(創傷治癒)を促進すると推定された。
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