体重約13kgの交雑種種去勢豚を供試した。基礎飼料は75%トウモロコシ、20%大豆粕および亜鉛無添加のミネラル・ビタミンミックスからなる飼料とした。基礎飼料の総亜鉛濃度は60mg/kgであった。これらの飼料に20mg/kgの酸化亜鉛を添加し非標識飼料とした。また、亜鉛濃度が非標識飼料と同じになる様に20mg/kgの67Znを酸化亜鉛として添加した標識飼料を調製した。標識飼料には非吸収性糞中マーカーとして希土類であるディスプロシウムを250mg/kg添加した。飼料給与は12時間給餌/12時間絶食とし、1週間非標識飼料を給与した。試験期間第1日の給餌期開始時に200gの67Zn標識飼料を2時間給与した。その後、飼料を非標識飼料に置き換えた。5日間連続して糞を採取し、糞中総亜鉛を原子吸光法で、67Zn/64Zn 同位体比ならびにディスプロシウムをICP-質量分析計で測定した。飼料に添加したディスプロシウム濃度は標識飼料給与2日目で最大となり、5日では投与したディスプロシウムの2%以下しか排泄されなかった。また、標識由来の67Znの排泄パターンもディスプロシウムの排泄パターンとほぼ同一であった。したがって、ディスプロシウムは亜鉛の吸収試験をする際には適切な非吸収性マーカーであることが示された。本試験で得られた67Zn/64Zn同位体比の最大値は0.145±0.027(平均±標準偏差)であり、5日後の同位体比は0.095±0.002であった。添加回収試験による67Zn/64Zn同位体比の検出限界は0.092であったので、標識飼料添加後5日間の糞を用いて亜鉛吸収を検討する場合は、67Znを4mg与える必要があることが明らかになった。なお、本試験の結果から求めた亜鉛の見かけの吸収は12±4mg/d、真の吸収は20±6mg/dであり、内因性糞中亜鉛排泄量は8±3mg/dであった。
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