研究概要 |
1.研究目的 近年、飼料イネが注目され、品種の育成、栽培・利用技術の開発が進められつつある。主な家畜粗飼料である寒地型イネ科牧草では、可溶性糖類の主な成分であるフルクタン含量の増加が、家畜の嗜好性・健康機能保持の向上に関わることが報告されている。イネでは光合成同化産物を主にデンプンとして葉緑体に貯蔵し、フルクタン合成能力はない。また,イネ科牧草やコムギでは液胞に蓄積されたフルクタンはエネルギー源として栄養生長に利用される。そこで本研究では、イネの炭酸固定能を高め,飼料価値を向上させることを目的に、フルクタン合成酵素遺伝子をイネに導入し、フルクタン・フルクトオリゴ糖を液胞に蓄積させた新規イネについて糖類、細胞壁成分などを分析し、飼料イネとしての応用利用を評価する。 2.結果の概要 単独遺伝子導入: (1)1-SST及び6-SFT単独遺伝子導入はCaMV35Sプロモーターにエンハンサー等が付加されたプロモーターを用い形質転換体を作成した。それぞれT_0の異なる5系統(1-SST)と3系統(6-SFT)のホモ形質転換体T_2を得た。 (2)上記ホモのT_2において導入遺伝子発現を調べた結果、ノーザンブロット解析で1-SST及び6-SFT遺伝子の発現が検出された。 二遺伝子導入: (1)1-SSTにはトウモロコシユビキチンプロモーター、6-SFTはCaMV35Sプロモーターにエンハンサー等が付加されたプロモーターを用い、形質転換体を作成した。 (2)後代選抜により、T_0の異なる5系統の二遺伝子ホモ形質転換体T_2を得た。 蓄積フルクタンの構造: (1)選抜中のフルクタン分析から、1-SST導入個体ではβ(2-1)結合のイヌリンタイプのフルクトオリゴ糖が蓄積し、6-SFT導入個体ではβ(2-6)結合のオリゴ及び多糖が主に蓄積し、ビフルコースにフルクトースがβ(2-1)結合で重合したオリゴ糖蓄積も確認された。 (2)両遺伝子が導入された個体では上記の両方の構造を持ったフルクタンが蓄積した。
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