研究概要 |
近年、飼料イネが注目され、品種の育成、栽培・利用技術の開発が進められつつある。主な家畜粗飼料である寒地型イネ科牧草では、可溶性糖類の主な成分であるフルクタン含量の増加が、家畜の嗜好性・健康機能保持の向上に関わることが報告されている。イネでは光合成同化産物を主にデンプンとして葉緑体に貯蔵し、フルクタン合成能力はない。イネの炭酸固定能を高め,飼料価値を向上させることを目的に、フルクタン合成酵素遺伝子をイネに導入し、フルクタン・フルクトオリゴ糖を液胞に蓄積させた新規イネについて糖類、飼料イネとしての応用利用を評価した。 イネにコムギのフルクタン合成遺伝子1-SST及び6-SFT単独遺伝子導入と1-SSTと6-SFTの2遺伝子連結導入を行い、それぞれフルクタンの蓄積するT_0の異なる5系統以上のホモ形質転換体T_2を得た。得られた形質転換体には形態異常は見られなかった。形質転換体は出穂、開花が遅れる傾向があり、1-SST単独導入及び2遺伝子導入系統では、1週間以上遅れる系統もあった。出穂が遅れる系統では、生育後期の生長量が高く、止葉やその前の葉の長さが原品種より長くなった。1-SST導入個体ではβ(2-1)結合のイヌリンタイプのフルクトオリゴ糖が蓄積し、6-SFT導入個体ではβ(2-6)結合のオリゴ及び多糖が主に蓄積し、ビフルコースにフルクトースがβ(2-1)結合で重合したオリゴ糖蓄積も確認された。両遺伝子が導入された個体では上記の両方の構造を持ったフルクタンが蓄積した。T_3における葉組織のフルクタンの含量は、閉鎖系温.室で生重量1gあたり1-SST導入系統で約17-23mg,6-SFT導入系統で約2-7mg、2遺伝子導入では約26-37mgになり、総含量もほぼフルクタン含量分増加した。これらの結果は、フルクタンを蓄積するイネが飼料利用に高負荷価値を与える素材となりうることを示した。
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