研究概要 |
本年度は,哺乳動物卵母細胞の細胞骨格の分布に対する細胞周期制御因子と細胞内シグナル伝達因子の影響について検討した。 1.哺乳動物卵のケラチンに対する細胞周期制御キナーゼの機能的役割 ハムスター卵の成熟過程におけるケラチンの動態に及ぼすMPF,MAPK,Rhoキナーゼの影響を蛍光イメージングにより追跡した。その結果,ハムスター卵にはケラチンが存在すること,また卵成熟中にその分布がGV期での集塊状から,MII期の繊維状にダイナミックに変化することを明らかにした。細胞周期制御因子であるMPFとMAPキナーゼを阻害すると,これらケラチンの分布変化が起こらなかった。一方,シグナル伝達系のRhoキナーゼを阻害しても影響は見られなかった。以上から,哺乳動物卵におけるケラチンの構築にMPFとMAPキナーゼが関与するが,Rhoキナーゼは関与しないことが示唆された。 2.ブタ卵母細胞の成熟におけるRhoキナーゼの機能的役割 ブタ卵母細胞成熟中における,低分子量Gタンパク質Rhoの機能を調べた。その結果,Rhoキナーゼを阻害すると,卵核胞崩壊と第一極体の放出が抑制された。ただし,染色体の分離には影響は認められなかった。ところが,卵核胞期の18時間以降にRhoキナーゼを阻害すると,卵核胞が崩壊した。このことから,Rhoキナーゼは培養18時間までに卵核胞崩壊を引き起こす経路で機能的な役割を果たすことが明らかとなった。Rhoキナーゼを阻害した卵複合体ではマイクロフィラメントの染色強度が著しく低下することから,第一極体の放出の抑制はマイクロフィラメントの機能が抑制されたためと推察された。さらに,これらの卵複合体複合体では,卵丘細胞の膨化が認められなかった。細胞骨格の蛍光染色の結果から,マイクロフィラメントばかりではなく卵丘細胞間の微小管の形成に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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