〔目的〕寒冷環境下にあるヒツジのタンパク質合成・分解速度に及ぼすエネルギー給与量の影響を明らかにする。 〔実験1〕同位元素希釈法の検討 全身のタンパク質代謝測定に最も広範に使用されているロイシン法(Leu法)とフェニルアラニン-水酸化モデル(Pheモデル)で得られるデータを比較するために、2水準の飼料(維持の100%および160%)を給与したヒツジ4頭を用い、Leu法とPheモデルを同時に実施した。その結果、Pheモデルで得られたタンパク質合成・分解速度はLeu法で得られた結果よりもやや低かったが、飼料水準に対する反応は同等であり、Pheモデルもヒツジのタンパク質代謝動態の測定に使用可能であることを明らかにした。 〔実験2〕エネルギー給与量の影響 実験にはヒツジ8頭を用いた。飼料のエネルギー給与量を維持の100%および160%の2飼料区を設定した。常温環(23℃)および寒冷暴露時にPheモデルを実施した。その結果、血漿フェニルアラニン、チロシンの代謝回転速度、タパク質合成速度および分解速度は160%区が100%区より高く、寒冷環境下では増加することを明らかにした。 〔実験3〕エネルギー基質およびインスリン注入の影響 ヒツジ6頭を用い、常温および寒冷環境下においてグルコース、VFA混合液あるいは生理食塩水を6時間にわたり血中に連続注入した。その間、Pheモデルを実施し、実験後半の2時間インスリンを注入した。その結果、タンパク質合成速度はエネルギー基質およびインスリン注入によって影響されなかったが、寒冷環境下で有意に増加した。 〔結論〕本研究の結果から、寒冷環境下ではヒツジのタンパク質合成・分解速度は、エネルギー給与量や種類に係わらず、増加することが示された。したがって、寒冷環境下における反芻家畜の効率的生産にエネルギー給与をはじめとする飼養管理の重要性が示された。
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