高齢Rockefeller(RF)マウス由来卵子を使用して、若齢マウス除核細胞質へ電気融合し胚発生率の改善が可能か否かを検討した。高齢RFマウスの繁殖能を自然交配によって検討し、10ヶ月以降は不妊となることが明らかとなり、高齢不妊モデルとなりうることを示した。また、高齢RFマウス卵子の体外受精後、第一卵割期において高齢不妊患者に見られるような異数体胚の出現は確認されなかったことにより、染色体異常を除外した胚発生および胎仔発生能のM-II-tによる改善モデルとして高齢RFマウス卵子の有用性が示された。高齢RFマウス卵子を若齢F_1マウス卵子へ核移植することで胚発生能を改善できること、また高齢RFマウス卵子を再構築後、体外受精し2細胞期で胚移植した結果、高齢RFマウス細胞質からなる再構築卵子より、胎仔への発生能が有意に高い値を示した。M-II-tにより高齢RFマウス卵子の胚発生能および胎仔への発生能が改善可能であった。また、M-II-tに伴う細胞質の混合(ミトコンドリアヘテロプラスミー)は胎仔への発生率に影響しないことが示され、M-II-tが高齢不妊患者へ応用可能と示唆された。さらにGV核置換卵子を高率に融合することが可能になったが、未成熟な段階での卵丘細胞の剥離やGV期核という大きな核置換操作、および電気融合などの過程が与える卵子への負荷が懸念された。そこで、再構築卵子をIVMへ供した後、その成熟率と第1減数分裂中期像の出現率を調べることで、これら一連の過程を経て作製された再構築卵子の成熟能の正常性を検討した。処理卵子群の判別可能な染色体標本のうち、すべての標本で中期の染色体像が確認でき、再構築された卵子がIVMを経過して核成熟を完了させる能力があることを示唆していた。
|