研究概要 |
1.ハムスター円形精子細胞の顕微受精において活性化処理が受精と発生に及ぼす影響を検討した。(1)10μMイオノフォア5分間処理による未受精卵の単為活性化率は無処理区よりも有意に高かった(79% vs. 24%)。(2)円形精子細胞をピペティングで壊したのちに精子核と精子細胞質を卵細胞質に 顕微注入する方法(ROSI)では,活性化処理の有無に関わらず,卵活性化率(80% vs. 78%),正常受精率(54% vs. 60%),胚盤胞率(14% vs. 13%)に差はなかった。一方,円形精子細胞核のみを顕微注入する方法では,卵活性化率,正常受精率に差がなかったが,胚盤胞率は活性化処理区で有意に高くなった(16% vs. 0%)。(3)ROSI活性化処理区の桑実期胚と胚盤胞23個を胚移植した結果,5匹の産仔(22%)が得られ,活性化処理なしの産子率(3%,3/36)と比べ有意に高かった。2.凍結保存した円形精子細胞の顕微受精では,新鮮円形精子細胞の顕微受精と比べ,受精率,胚盤胞率に差はなく,桑実期胚と胚盤胞30個を胚移植して4匹(13%)の産仔が誕生した。3.ROSIにおけるミトコンドリアの動態を蛍光物質Mit-Trackerによって観察した。ミトコンドリアは前核期胚では前核周囲を取り囲むように,2細胞期胚では核周囲を取り囲むように集合していた。4,ネコ体外成熟卵への精巣上体尾部精子と円形精子細胞の顕微受精における受精と発生を調べた。(1)ディチオスレイトール処理,無処理の精巣上体尾部精子を各40個と41個のネコ体外成熟卵子に顕微注入した結果,各55%と39%が2細胞期に,各25%と17%が胚盤胞に発生した。(2)円形精子の顕微受精においては,活性化処理なしでは胚盤胞に発生せず,2回の5μMイオノマイシン5分間処理と1.9mM 6-DMAP3時間培養の複合活性化処理によって28%が胚盤胞に発生した。
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