研究概要 |
日本飼養標準が推奨する飼料中リジン濃度に比較し、30%リジン濃度が低い飼料(低リジン飼料)を、6週齢の豚に3週間給与し、以下の解析を実施した。 1、胸最長筋の凍結切片をオイルレッド-O-染色したところ、対照飼料の給与に比較して、低リジン飼料の給与により脂肪細胞が大きくなっていることが観察された。このことから、低リジン飼料給与による脂肪交雑形成メカニズムの検討が、本実験系によって可能であるが明らかになった。また、豚の胸最長筋における脂肪細胞は、結合組織に沿って分化してくることが確認できた。 2、胸最長筋ならびに菱形筋における、ミトコンドリア電子伝達系第I複合体の呼吸関連酵素・NADH-脱水素酵素活性を有する筋線維の分布、ならびにミオシンATPase活性を有する筋繊維の分布を,組織化学的方法により観察したところ、リジン濃度による明確な影響は観察されなかった。このことから、充足率70%程度の低リジン飼料の給与では、筋肉の酸化特性と収縮特性に影響は無いことが推察された。 3、胸最長筋からRNAを抽出し、adipogensis関連遺伝子発現について、RT-PCRで検討したところ、Adipocyte Determination Differentiation-dependent factor 1,Fatty acid synthase,アディポネクチン,PPARγ,リポ蛋白質リパーゼの発現が確認された。C/EBPファミリーについては現在検討中である。今後は、飼料中リジン濃度がこれらの遺伝子の発現量に及ぼす影響について解析するとともに、豚の筋肉を供したIn situ hybridizationの最適条件を決定する。
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