アドレナリンβ受容体は、動物の生体内で脂質分解およびエネルギー代謝に関連するシグナル伝達系の一部として働き、ヒト遺伝子における変異は肥満を引き起こすことが知られている。ブタの脂肪量とアドレナリンβ受容体遺伝子多型との関連を検討するため、梅山豚種、デュロック種、ランドレース種のブタよりゲノムDNAを調製し、アドレナリンβ受容体遺伝子の塩基配列を決定した。ゲノムデータベースに発表されているブタのアドレナリンβ受容体遺伝子および他種動物のアドレナリンβ受容体遺伝子配列よりPCRのプライマーを設計し、そのPCR産物をダイレクトシーケンシングすることで3種類のアドレナリンβ受容体(ADRB1、ADRB2、ADRB3)の塩基配列を決定した。決定した塩基配列はADRB1が1453bp、ADRB2が1650bp、ADRB3が1224bpであり、複数の塩基置換が3品種の間で認められた。これらの塩基配列はブタアドレナリンβ受容体遺伝子の全アミノ酸翻訳領域をコードしており、ADRB1は469アミノ酸、ADRB2は418アミノ酸、ADRB3は407アミノ酸の配列であった。塩基配列における多型は、ADRB1で1カ所の非同義置換と1カ所の同義置換、ADRB2で2カ所の非同義置換と1カ所の同義置換、ADRB3で3カ所の非同義置換と8カ所の同義置換および1カ所の1塩基挿入が認められた。なかでも、ADRB2における非同義置換はヒトにおける肥満関連変異の置換アミノ酸部位に近く、ブタの皮下脂肪厚と関連する遺伝子変異である可能性が示唆された。品種間の違いは、梅山豚種とランドレース種の間で大きく、デュロック種は両品種の中間的な塩基配列を示した。
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