平成17年度は、梅山豚種、デュロック種〜ランドレース種のブタよりゲノムDNAを調製し、3種類のアドレナリンβ受容体(ADRB1、ADRB2、ADRB3)で全アミノ酸翻訳領域をカバーする塩基配列を決定した。決定した塩基配列はADRB1が1453bp、ADRB2が1650bp、ADRB3が1224bpであり、複数の塩基置換が3品種の間で認められた。塩基配列における多型は、ADRB1で1カ所の非同義置換と1カ所の同義置換、ADRB2で2カ所の非同義置換と1カ所の同義置換、ADRB3で3カ所の非同義置換と7カ所の同義置換および1カ所の1塩基挿入が認められた。品種間の違いは梅山豚種とランドレース種の間で大きく、デュロック種は両品種の中間的な塩基配列を示した。 18年度は、これらの非同義置換が皮下脂肪厚に与える効果を検討するため、デュロック種と金華豚種のF2集団を用いて関係を調査した。204頭から構成されるF2集団の中から平均背脂肪厚が40mm以上の厚脂グループ24頭と背脂肪厚30mm未満の薄脂グループ24頭を選び、アドレナリンβ受容体多型の発現頻度を比較した。ADRB1にはArg458Proの多型が存在し、交雑種の遺伝子頻度を調べるとPro型とArg型の比率は厚脂グループで0.54:0.46、薄脂グループで0.40:0.60となり、両グループ間で頻度が異なる傾向が認められた。また、厚脂グループおよび薄脂グループ内それぞれで、Pro型とArg型の背脂肪厚を比較するとPro型はArg型よりも約1mm厚い値を示した。ADRB2ではアミノ酸変異を伴う2カ所の多型が存在し、厚脂グループでは薄脂グループに比べ29Asn、30Gluの頻度が高い傾向が認められたが、有意な差異とはならなかった。ADRB3は試験グループ内でほとんど多型が認められず、頻度比較の結果を得ることができなかった。
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