研究概要 |
明暗周期を体内に伝える物質であるメラトニンは、下垂体からのホルモン分泌を調節するマスターホルモンとして、動物の種々の生体機能を調節していることが示唆されているが、ウシにおける報告はほとんどない。本研究では、畜産学上非常に重要であるウシ成長ホルモン(GH)分泌調節機構におけるメラトニンの役割に着目して以下の実験を行った。ホルスタイン去勢ウシの第3脳室内に、脳定位手術により慢性的にカニューレを留置した。ウシを12時間明期12時間暗期(06:00点灯、18:00消灯)の環境に馴致させた後、内因性のメラトニン濃度が低下していると考えられる明期の中間時点(12:00)で、第3脳室内にメラトニン(0,100,300,600μg)を投与し、投与前後の血中GH及びメラトニン濃度を測定した。メラトニンの投与は、いずれの投与量においても下垂体からのGH分泌を刺激し、特に100μgの投与でもっとも強い刺激効果が得られ、その効果は持続的だった。この投与量によって得られた血中メラトニン濃度は、以前報告された自然状態での夜間におけるウシ血中メラトニン濃度と同等であった。また、メラトニンのGH分泌調節作用における視床下部の役割を明らかにするため、メラトニン(脳室内)とGH放出ホルモン(GHRH;静脈内)の同時投与を行った。メラトニンの同時投与は、GHRHのGH刺激効果を変化させなかった。このことから、メラトニンがウシにおいて、視床下部を介してGH分泌を調節する機能を持つことが示唆された。
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