I型コロナウイルスの多くはアミノペプチダーゼN(APN)をレセプターとして利用し、標的細胞へ侵入する。特に、ネコAPN(fAPN)は宿主の異なる多くI型コロナウイルスがレセプターとして利用可能であることから、ネコAPN(fAPN)を発現する株化細胞やマウスを作製することにより、多くのI型コロナウイルスに対する感染モデル細胞・疾患モデルマウスとして利用できるものと期待される。 ネコ胎児由来株化細胞fcwf-4細胞からRT-PCR法によりfAPN cDNAを増幅し、大腸菌発現系を用いて組み換えタンパク質を作製した。作製した組み換えfAPNを用いて抗fAPNモノクローナル抗体(マウス)、抗fAPNポリクローナル抗体(ウサギ)を作製した。抗fAPNポリクローナル抗体はネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)の異なる2つのタイプ(Type IとType II)の宿主細胞への吸着を阻止したが、抗fAPNモノクローナル抗体3クローンはType II FIPVの吸着は阻止したものの、Type I FIPVの吸着を阻止することはできなかった。以上の結果から、Type I、Type II FIPV両者ともfAPNをレセプターとして利用するがウイルスのfAPNへの結合エピトープが異なることが示唆された。 クローニングしたfAPN cDNAを哺乳類細胞発現ベクター(pCDNA3)に組み込み、マウスマクロファージ系株化細胞(J774.1A)にトランスフェクトすることにより、fAPN発現マウスマクロファージ細胞株を得た。現在、FIPV感染時のサイトカイン発現パターン等を解析中である。
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