実験動物としてマウスを使用し、卵巣内の生殖幹細胞の検索、採取法についての検討、培養を行った。卵巣内での生殖幹細胞の分布を明らかにするために、5-プロモ2'-デオキシウリジン(BrdU)の腹腔内投与によるDNA合成細胞の標識、増殖細胞のマーカーであるKi-67抗原およびminichromosome maintenance deficient 3(MCM3)とVasaホモログの共局在について免疫組織化学的手法により検討した。BrdUの取り込み、Ki67抗原の発現、およびMCM3の発現は主として顆粒層細胞に認められ、Vasaホモログを発現している卵母細胞および卵巣表面の細胞で明瞭な反応は認められなかった。また、卵巣から生殖幹細胞を採取するために、BrdU投与後または無処理のマウスから卵巣を採取し、コラゲナーゼにより酵素処理して、卵巣表層または卵巣全体から細胞浮遊液を作製し、ナイロンメッシュ(40μm)濾過後、Percoll密度勾配遠心分離による分画、基質付着性による分画について検討した。各分画の細胞塗抹標本について蛍光免疫組織化学法によりVasaホモログ発現とBrdU取り込み、Ki-67発現、またはMCM3発現の共局在を検索した。基質付着性による分画では、組織培養ディッシュ中で12〜14時間培養後、緩衝液での洗浄により回収されるものを浮遊分画、洗浄後にディッシュからトリプシン処理により剥離されたものを接着分画とした。コラゲナーゼ処理後または分画後の細胞を、ポリエチレンイミン処理したスライドガラス上で培養し、培養中のBrdU取り込みについても検討した。Percoll分画では、Vasaホモログ陽性細胞は20%/40% Percoll層の界面の細胞層に多く含まれ、40%/60% Percoll層の界面にも観察されたが、これらにおいて細胞増殖は認められなかった。基質付着性による分画では、浮遊分画においてわずかにVasaホモログ陽性BrdU陽性の細胞が観察されたが、再現性は低く、再検討が必要である。
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