ADAM12は筋肉・脂肪の両組織形成に関わる膜タンパク質で、ヒトADAM12を筋細胞で発現させたトランスジェニック(TG)マウスは筋肉内脂肪組織形成を示すことが報告されている。この表現型雌牛肉の「霜降り(脂肪交雑)」に類似した形質であることから、本研究では脂肪交雑モデルマウスの樹立を目的に、ウシADAM12遺伝子を導入したTGマウスの作出を行った。 既にクローニングしているウシADAM12cDNAを利用し、膜貫通型タンパク質(C3)を発現する導入遺伝子pMCK-bADAM12 C3、細胞外ドメイン全長(TRC)またはメタロプロテアーゼドメイン(MP)のみを分泌する導入遺伝子pMCK-bADAM12TRCとpMCK-bADAM12MPを作製した。これらの導入遺伝子の作製では、筋細胞特異的プロモーターとして、約1.5kbのマウスmuscle creatine kinase(MCK)プロモーターを使用した。 これら3種の遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製し、C3では1匹、TRCでは2匹、MPでは3匹のトランスジェニック個体が得られた。これらのトランスジェニックマウスと野生型マウスとを交配して得られた産子においてもトランスジェニック個体が得られ、導入遺伝子が後代に遺伝することが確認された。この結果、C3系統では1系統、TRCでは2系統、MPでは3系統のトランスジェニックマウス系統が樹立された。 3系統のTGマウス(C3、TRCおよびMP)について、20週齢での表現型解析を行った結果、体重や体脂肪量に変化はみられなかったが、TRCあるいはMP系統のTGマウスでは最長筋組織内での脂肪組織形成が促進されている傾向が示唆された。これに対し、C3系統のTGマウスではTRCの持つ機能ドメインを全て持つにもかかわらず、筋肉内脂肪組織形成の促進はみられなかった。TRC系統とMP系統で同様の筋肉内脂肪組織形成が認められたことから、この筋肉内脂肪組織形成の促進はMPドメインのみで可能であることが示唆された。
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