研究課題
本研究課題では過去に発表したヤギの下垂体におけるコラーゲン線維構築の三次元的特長に関する結果を受けて、組織形成過程にけるコラーゲン線維網の構築特性を詳細に検討することを目的としたが、他の動物についても同様の検討を行ったところ、ラット、ブタおよびニワトリの腺性下垂体においてコラーゲン構築像が異なることが明らかとなった。すなわち、ラットにおいて腺性下垂体のコラーゲン線維網は細胞索壁を不明瞭に反映しており、一方ブタでは明瞭な細胞索を示すコラーゲン線維による隔壁が認められ、どちらかと言えばヤギの持つ構造に近い様子を呈していた。ニワトリでは非常に繊細に編まれたコラーゲン隔壁が観察され、動物種によるコラーゲン構築の違いは器官の大きさ、細胞の分布特性あるいは血管分布の違いなどによることが示唆された。このような動物種による腺性下垂体におけるコラーゲン構築像の違いはその発達過程においても違いがあることが推測される。そこで、胚発生過程におけるコラーゲン構築の特性を明らかにするために、ニワトリ胚を用いて免疫組織化学的ならびに走査電子顕微鏡による観察により腺性下垂体に分布するコラーゲンの検出を試みた。その結果、孵卵8日目以降の胚の腺性下垂体においてI型コラーゲン陽性反応が認められ、その分布は腺の周辺部から内部へ向かって増加し、複雑な網目状の分布を呈するようになった。一方、走査型電子顕微鏡による観察では、孵卵8日目の胚において帯状のコラーゲン線維網が見られたのに続き、16日目胚では一部に膜状の隔壁構造が出現し、20日目胚では孵化後ならびに成鶏で見られるのと同様にほとんどの部分で膜状の隔壁構造が観察された。以上の結果より、ニワトリの腺性下垂体では孵卵8日目には既にコラーゲン構築が始まっており、その後の細胞集団の区画化を伴いながら、孵化直前には成体のものとほぼ同様の構造を完成させるものと考えられた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University 51・1
ページ: 121-124